島国である日本に古くから存在し、人と共に暮らしてきたと
言われている日本犬。
その日本犬の中でもっとも小型の犬が柴犬です。
日本犬の代表格であり、現在でも人気は衰えることのない
日本人にとっての定番の犬種といえます。
とても強い忠誠心を持った犬であることは、
誰でも知っている柴犬の大きな特徴の1つではないでしょうか?
時にはその忠誠心が、家族以外の人を受け入れない
強い警戒心として現れてしまうこともあります。
しかし、家族だけに忠実であるというところが、誰にでも愛想の良い
洋犬とは違う魅力として、たくさんの人に支持されているのかもしれません。
また子犬のときのふわふわでコロコロの姿は格別の可愛らしさがあり、
多くの人の心を引き付ける強い魅力を持っているようです。
近年では海外での人気も高まり、アメリカやヨーロッパなど世界各地で、
日本原産の柴犬たちが見られるようになってきました。
柴犬の歴史はとても古く、縄文時代にはすでに、
その原種となる犬が存在していたと言われています。
その時代の遺跡から、柴犬の祖先となる小型犬の骨が
発掘されているのです。
そのころから、人と共に暮らし、時には狩猟犬として、時には家畜や
田畑を守る番犬として、人々の生活に役立ってきたのです。
そして、その長い歴史の中でも、特に強い影響を受けるほどの人の
手が加えられることなく、数万、数千の時を、自然の流れのままで
生き続けてきました。
ところが、明治時代になり、段々と諸外国との交流が深まるにつれ、
日本国内にさまざまな洋犬が入ってくるようになり、それが日本犬の雑種化を進めてしまいます。
このままでは、日本古来の犬が滅んでしまうと危機感を持った人たちが、
昭和3年に日本犬保存会を発足し、いくつかの日本犬たちを
日本古来の原種犬として保存するための活動を始めます。
犬籍登録が始まり、各地域で受け継がれてきた犬たちの特徴をまとめ、いくつかの犬種として分類
され、それぞれの犬種標準が作られ、展覧会なども開催されるようになりました。
その犬種標準に基づき、計画的な繁殖が行われ、徐々にその犬種が確立されていくことになります。
その後昭和11年に小型の日本犬である柴犬が、文部省から蓄養動物として、
国の天然記念物に指定されます。
秋田犬や紀州犬など他の日本犬たちは、原産地の名前がつけられていきますが、
小型の犬である柴犬だけは、地域を特定せず、小さいという意味を持つ柴という言葉から、
柴犬と名づけられました。
このことが、より純粋な柴犬を現在へと受け継ぐために大きな助けとなります。
実はこのとき、すでに純粋な柴犬はかなり少なくなっていて、
1つの地域の柴犬だけでは、その種を保存していくことが難しくなっていました。
でも、地域を特定した犬種としての名前を持たなかった柴犬は、
日本各地から柴犬の特徴を強く持つ犬たちが選ばれ、繁殖をし、
徐々にその数を増やしていくことができたのです。
昭和30年代から小型犬の人気が高まり、柴犬も多くの人に求められるようになってきます。
そして、その人気は海外にもおよび、現在では日本原産の犬として、イギリスのKCや
アメリカのAKCなど、多くの国が加盟しているFCIなどにも公認犬種として認められています。
●柴犬のスタンダード
犬のスタンダードとは、犬の純潔性を守るため、
その犬の理想の形態や気質などを細かく定めたものです。
柴犬のスタンダードには、日本犬保存会が定めたものと、
それに準じてJKCが定めたものとがあります。
ここでは、JKC(ジャパンケンネルクラブ)が定める、
「柴犬」のスタンダードを大まかに記載します。
1.一般外貌
柴犬は、長い歴史を持っていますが、そのほとんどの月日を自然のまま脈々と受け継がれてきた犬種です。
そのためその容貌にも、その自然な美しさや素朴さが必要とされているようです。
スタンダードでも次のように記載されています。
・小型でよく均整がとれており、骨格がしっかりとして、筋肉がよく発達している。
・体質は強健で素朴感があり、動作は敏捷で、かつ自由で美しさを有している。
2.習性/性格
また長い年月の間、人と共に暮らし、狩猟犬や番犬としての役割を担ってきた柴犬ですので、
その性格についても次のように書かれています。
・忠実で、感覚鋭敏、警戒心に富んでいる。
3.頭部
柴犬の一番の特徴は、やはりその精悍な頭部にあると言ってもいいでしょう。
ここではスタンダードに記載されている頭部に関する記述をまとめてみます。
◎頭蓋(スカル)
・前頭部は幅広く、浅い額溝がある。
◎ストップ(目の付け根から口先へ切り替わる部分の凹み。額段とも言う。)
・明瞭である
◎マズル(目の付け根から鼻の先までの口先の部分)
・適度な太さで、丸みを有している。
・鼻梁は真っ直ぐである。
◎目
・三角形で暗褐色である。
・目尻が少し上がっている。
目は、柴犬の頭部の中でも特に重要な部分で、
目によって全体の印象が左右されると言ってもいいでしょう。
スタンダードには、その欠点などは特に記載されていませんが、
次のような目は好ましくないと言われています。
・丸い目
・目尻が下がっている目
・つり上がり過ぎて、細すぎる目
・沈みがなく、出ている目
◎耳
・やや小さく三角形で、やや前傾してしっかり立っている。
耳も柴犬の特徴を示すには重要なパーツの1つです。
もう少し詳しくその形状について触れておきたいと思います。
正面から見たときに、内側のラインは直線で、
外側のラインが緩やかなカーブを描いているのが理想的と言われています。
そして、横から見たときには、耳の前のラインが額のラインに対して垂直になっているのが
望ましい耳の形になります。
4.尻尾(テール)
ふわふわの毛に覆われて、クルンと巻いた尻尾はとてもかわいい印象を与えてくれます。
でも、スタンダードでは2種類の尻尾が認められています。
・付け根は高く、太く、力強く背上に巻くか、鎌状の指し尾で、
長さはほぼ飛節(後ろ足のかかとの部分)に達する。
差し尾とは、尾の先端が背中を差していることから付けられた呼び名で、
その名の通り背中に背負った尻尾の先がアーチを描いて、その先端が背中を差しています。
5.コート(被毛)
柴犬のコートは、パリッとした手触りの上毛と、ふわふわの下毛があるダブルコートです。
冬の寒い時期になると、下毛が充実してきて、全体的な見た目も豪華に立派になっていきます。
その姿はまさに威風堂々としたもので、日本犬の美しさを感じられます。
そんな柴犬のコートについて、スタンダードには次のように記述されています。
・上毛は硬く真っ直ぐで、下毛は柔らかく密生している。
・尾の毛はやや長く開立している。
6.カラー(毛色)
柴犬の毛色(カラー)について、スタンダードには次のように規定されています。
・赤、黒褐色、胡麻、黒胡麻、赤胡麻。
上記毛色はすべて「裏白」でなければならない。
毛色の主流はやはり赤。赤の柴犬が全体の70%程を占めているようです。
そして、黒褐色と言う毛色は単色を意味しているのではなく、
目の上、頬、マズル(口先)、四肢などにタンのマークが入っています。
また、胡麻については、赤毛や黒毛、そして白い毛などが混ざり合って
全体的な模様を作り出している毛色です。
スタンダードにも特記して書かれている「裏白」。
これこそが日本犬の大きな特徴の1つで、柴犬も例外ではありません。
簡単に言うと、犬を下(裏)から見たときに見える部分、顎の下や胸、
お腹や四肢の内側、尾の裏側などの毛色が白くなっていることです。
また、斑と白の毛色は認められていません。
7.サイズ(大きさ)
柴犬のサイズは、その体高がスタンダードでは定められています。
雄:39.5cm
雌:36.5cm
それぞれ上下各1.5cmまでとする。
いろいろ見てきましたが、スタンダードからはずれている場合でも、
それはその子の個性であるといえますので、愛情をたくさん注いで育ててあげてくださいね。
ペットとして愛情を注いで飼う分には、スタンダードなんて関係ないですからね(*^^*)